
坂本圭子(さかもと けいこ)
管理栄養士、フードスペシャリスト
なぜ夜ご飯の内容に気をつける必要があるのか?
夜間は身体が休息状態に入ることで、消化酵素の働きが低下します。そのため、カロリーの高い食事や糖質を摂りすぎてしまうと、食べたものが体内でエネルギー消費されず、余った分は体脂肪として蓄積されやすくなります。
また、夜遅い食事は太りやすいことも遺伝子レベルの研究で実証されています。
日中の糖質摂取は身体や脳を動かすエネルギー源になりますので、適度に摂取しながら栄養バランスの良い食事を摂ることが好ましいとされています。
しかし、夜間はエネルギー消費量が日中に比べて低くなりますので、夜ご飯は糖質を抑えつつ低脂質のメニューがおすすめです。
例えば、夜ご飯はお米や果物、芋類などの糖質が多い食品は控えて、たんぱく質や野菜などおかず中心のメニューを選べると理想的です。
ダイエット中の夜ご飯は低脂質の豆腐がおすすめ
たんぱく質のおかずの中でも豆腐は低カロリーで、脂質が少ない傾向にあります。
また、豆腐は大豆製品でも低糖質な部類なのでダイエット中の夜ご飯にはぴったりのメニューと言えます。
もし、夜ご飯にたんぱく質が多いメニューを食べたら、食事が終わってから就寝するまでは3時間くらい空けることが推奨されています。
なぜなら、肉や魚などのたんぱく質や脂質が多い食事は消化に時間がかかるため、夜ご飯の時間が遅ければ食べたのものが胃に残ってしまい、胃もたれの原因になるからです。
その影響から、翌朝、食欲がなく欠食してしまったりすると生活リズムも崩れやすくなります。なので、夜ご飯のメニューはたんぱく質や脂質が多い動物性食品はできるだけ避けて、豆腐などの植物性たんぱく質のおかずを選んでみましょう。
おかずによってもカロリー、たんぱく質、脂質、炭水化物がこんなに違う!
(100gあたり 八訂食品成分表より)
肉類
カロリー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
豚バラ(脂身つき)生 | 366kcal | 14.4g | 35.4g | 0.1g |
豚ロース(脂身つき)生 | 248kcal | 19.3g | 19.2g | 0.2g |
牛もも肉(和牛)生 | 176kcal | 21.3g | 10.7g | 0.6g |
豚もも肉(赤肉)生 | 119kcal | 22.1g | 3.6g | 0.2g |
鶏むね肉(皮なし)生 | 105kcal | 23.3g | 1.9g | 0.1g |
鶏ささみ肉 生 | 98kcal | 23.9g | 0.8g | 0.1g |
バラ肉は肉の中では最も脂質が多く高カロリーです。続いてロース肉もカロリーが高い仲間に入ります。これらの肉は夕食のみならず、日中でも摂りすぎには注意が必要です。
鶏ささみ肉は低カロリーですが、たんぱく質量が多いのでなるべく日中に摂るようにして、夕食はできるだけ避けられると良いでしょう。
魚類
カロリー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
さんま(皮付き)生 | 287kcal | 18.1g | 25.6g | 0.1g |
さば(まさば)生 | 211kcal | 20.6g | 16.8g | 0.3g |
かつお 秋どり 生 | 150kal | 25.0g | 6.2g | 0.2g |
鮭(べにざけ) 生 | 127kcal | 22.5g | 4.5g | 0.1g |
かつお 春どり 生 | 108kal | 25.8g | 0.5g | 0.1g |
たら(すけとうだら)生 | 72kcal | 17.4g | 1.0g | 0.1g |
まいわし 生 | 60kcal | 19.2g | 9.2g | 2.3g |
さばやさんまなどの青魚は脂質が多く、カロリーも高くなるため、摂取量には注意しましょう。
一方、たらや鮭などの淡泊な魚はカロリーが低くなりますが、たんぱく質がやや多い傾向にあります。
大豆製品
カロリー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
油揚げ | 377kcal | 23.4g | 34.4g | 0.4g |
納豆 | 190kcal | 16.5g | 10.0g | 12.1g |
大豆 (国産)ゆで(全粒・黄大豆) | 163kal | 33.0g | 9.8g | 8.4g |
厚揚げ | 143kcal | 10.7g | 11.3g | 1.5g |
木綿豆腐 | 73kcal | 7.0g | 4.9g | 1.5g |
絹ごし豆腐 | 56kcal | 5.1g | 3.5g | 2.0g |
大豆製品の中では、油揚げや厚揚げはカロリーや脂質が高い傾向にありますが、豆腐はカロリーやたんぱく質、脂質が最も抑えられているのが良く分かります。
また、肉や魚などと比べても、最も低カロリーで低たんぱく質な食品になります。
豆腐がおすすめな理由・豆腐の特徴とは?
豆腐には絹ごし豆腐と木綿豆腐の2種類あり、作り方や含まれている栄養素も異なります。
絹ごし豆腐
豆乳を全て凝固させてから作ります。水分量がたくさん含まれて、口当たりが良いのが特徴。
カロリーや脂質、炭水化物が木綿豆腐よりも低いので、よりダイエット効果を高めたい方には最適です。
木綿豆腐
豆乳に凝固剤を加えた後に固めます。そして、崩してから再び成型し、圧力をかけて水分や油分などをしっかり除いてから作ります。
さらに大豆の風味が濃縮され、表面はざらざらしており、歯ごたえが感じられます。
絹ごし豆腐よりもカルシウムやたんぱく質なども多い特徴があります。
栄養素をより多く摂りたいときや豆腐の固さを生かしたい料理におすすめです。
豆腐は優秀なおかず?!/豆腐はどんな働きがある?
豆腐にはレシチン、サポニン、イソフラボンなどの栄養素が多く含まれています。
レシチン
血管内のコレステロールを溶かし、血液をサラサラにして綺麗にしてくれます。
また、肝臓内の脂肪を減らす働きもあります。
サポニン
苦味やえぐ味などの原因物資になりますが、脂肪の蓄積を防いだり、免疫力の向上、血管内に付着した脂肪を取り除く役割があります。
イソフラボン
女性ホルモンに似た働きがあり、骨粗鬆症の予防、更年期による高血圧やコレステロールの上昇を抑える働きがあります。
サプリメントではイソフラボンの過剰摂取のリスクを考慮して上限値が設けられていますが、豆腐など大豆製品は設定されていません。
豆腐はGI値も低い?
GI値とはグライセミック・インデックスと呼ばれ、食品を摂取したことで食後の血糖値がどれだけ上昇するかを数値で表したものです。
例えば、豆腐の場合、GI値は55以下になりますので低GI食品と呼ばれています。
一方、精白米や食パンなどはGI値が70以上なので高GI食品と呼ばれています。
とくに、ダイエット中は食品の中でも低GI食品を選ぶことが重要になりますので、豆腐はおすすすめなメニューです。
GI値が高い食品を食べると、血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分泌されてしまいます。しかし、GI値が低い食品であれば、血糖値の上昇が緩やかになるのでインスリンの分泌量は少量で済みます。
つまり、インスリンというホルモンは、細胞に糖を取り込み、余ったものを中性脂肪に溜め込む性質があります。
したがって、インスリンの分泌量をしっかり抑えることがダイエットにも繋がるのです。
豆腐と組み合わせると良い食材
豆腐にはたんぱく質、カルシウム、ビタミンB群、食物繊維、鉄などが含まれています。
しかし、豆腐にはビタミンCやβカロテンが少ない傾向にあります。不足した栄養素を補うためにもそれらが豊富に含まれている食材を意識すると良いでしょう。
ビタミンCにはブロッコリー、赤ピーマン、黄ピーマン、キャベツなどが含まれ、βカロテンにはほうれん草、人参、モロヘイヤなどに含まれています。
これらの野菜を豆腐のトッピングにしてみたり、具だくさん野菜のスープや味噌汁に豆腐を入れるのもおすすめです。
豆腐の目安量とは?
食品安全委員会の報告書では、1日のイソフラボン摂取量は75mgが毎日摂取しても安心な値として記載されています。
それでは、イソフラボン75mgとは豆腐なら1日にどのくらいの量なのでしょうか?
豆腐1丁300gで約80mgのイソフラボン量が摂取できます。
カロリーは木綿豆腐なら219kcal、絹ごし豆腐なら168kcalになります。
しかし、豆腐は低カロリーだからといって食べ過ぎはカロリー過多になりがちなので注意しましょう。
ダイエット中の夜ご飯でしたら100〜200gくらいまでを目安にできると良いでしょう。野菜やきのこ、海藻などと組み合わせるとボリュームもアップしますので満足感も高まりますよ。
ダイエットにおすすめな豆腐を使ったおかずメニュー
①たっぷり野菜の白和え
水切りした木綿豆腐に下茹でしたオクラやほうれん草、人参などの野菜を一緒に和えます。そして、麺つゆ、白すりごま、砂糖、塩などで味付けしたメニューです。
木綿豆腐を使用していることと、野菜がたくさん入っているので、歯ごたえやボリュームもアップして満腹感もアップします。野菜は細かすぎず、少し大き目にカットして和えることで咀嚼数もアップして食べ過ぎ予防にもなります。
②豆腐とトマトのヘルシースープ
鶏ガラスープと醤油で作ったスープに、絹ごし豆腐とトマト、ニラ、エリンギを一緒に煮込んだメニューです。トマトの酸味がクセになる味わいです。
トマトには抗酸化作用が高いリコピンが豊富に含まれています。トマトは加熱することでリコピンの吸収率がアップします。
また、野菜やきのこ類が入っているので食物繊維も一緒に摂ることができます。
スープにしていますので、野菜やきのこなどから流れ出た旨味やビタミンなども余すことなく摂取できるのは嬉しいポイントです。野菜はニラ以外にも白菜やねぎなどで代用も可能です。
③豆腐とワカメのチョレギサラダ
ワカメや豆苗、ねぎ、キュウリなどの具材を混ぜ、絹ごし豆腐や海苔、白いりごまをトッピングします。
ドレッシングは、鶏ガラスープの素、砂糖、醤油、酢、ごま油、すりおろしニンニクを混ぜて作り、食べる直前にかけたら完成です。自宅にある調味料を使って簡単に作ることができますよ。
ワカメや海苔などの海藻には水溶性食物繊維が多く含まれています。水溶性食物繊維は胃の中をゆっくり移動することで血糖値の上昇を防ぎ、満腹感を得られやすい効果があります。
また、水溶性食物繊維は善玉菌のエサになるため、腸内環境を改善する働きが期待できます。
④豆腐と根菜類の煮物
大根、人参、ごぼう、板こんにゃくなどを出汁、醤油、酒、砂糖などの調味料を加えて一緒に木綿豆腐を煮込んだ筑前煮のようなメニューです。豆腐は手でちぎって入れると味が染み込みやすくなります。
根菜類は食物繊維が多く、咀嚼数も増えるので満腹感も得られやすいメリットもあります。調味料の糖質が気になる場合はラカント(カロリーゼロの自然派甘味料)で代用するのもおすすめです。
最後に
ダイエット中は栄養バランスの良い食事をとることが大切になります。しかし、夜ご飯のメニューは、糖質や脂質などを抑えることでよりダイエット効果が高まります。まずはヘルシーな豆腐を上手に活用しながら食事管理を実践していきましょう。