
坂本圭子(さかもと けいこ)
管理栄養士、フードスペシャリスト
筋トレをしていると、たんぱく質の摂取に目が行きがちですが、野菜には様々な栄養素が含まれ、機能性も注目されています。そのため、野菜を食事に上手く食事に取り入れられると筋トレの効果を高めてくれますよ。
この記事では筋トレに効果的な野菜のとり方やおすすめメニューなどを紹介します。
筋トレ中に野菜が必要な理由とは?
筋トレと野菜に含まれている栄養素の関係
筋トレ中にはしっかり野菜を摂ることも重要です。筋肉をつけるためには、たんぱく質を補給することが大切ですが、単にたんぱく質だけを補えば良いという訳ではありません。野菜に含まれているビタミンやミネラルなどもバランス良く補うことが大切なのです。
その理由は、筋トレを行うと筋繊維が損傷してしまいますので、偏りなく栄養素を補給しないと筋肉の修復や合成がされなくなってしまうからです。
つまり、エネルギーやビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足すると、筋トレをしても筋肉がつきにくい身体になります。
例えば、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素は身体を動かす車のような働きがあります。言わば、ビタミンやミネラルは潤滑油の働きがあり、それがなくては三大栄養素が体内で効率良く働きません。
そのためには、摂取した栄養素を体内でエネルギー代謝し、必要な栄養素を筋肉に届けることが必要になります。それをサポートをしてくれるのがビタミンやミネラルになります。
また、ビタミンやミネラルはそれぞれ色々な特徴があり、栄養素の効果を高めてくれる存在なのです。
栄養素の役割とは?
炭水化物
炭水化物はトレーニング時にエネルギーとなり燃焼されます。運動強度が高くなれば必要な量が増え、筋肉や肝臓にグリコーゲンとしてストックされ、必要時に使われます。
たんぱく質
たんぱく質は筋肉や血液、骨などを作る材料になります。筋肉はトレーニングによって分解され、摂取したたんぱく質を体内で吸収しながら筋肉へ合成されていきます。
脂質
脂質は筋トレやダイエット中は摂りすぎには注意したい栄養素ではありますが、ホルモンの材料になったり、細胞膜を作る役目もありますので、適度な摂取がおすすめです。
ビタミン
ビタミンは体内でほとんどが合成されないので、食品から摂取する必要があります。また、ビタミンは身体を作る栄養素ではありませんが、エネルギーを作り出すサポート役であり、健康維持には欠かせないものです。ビタミンの必要量は三大栄養素に比べると少なくなりますが、少量でも体内でしっかり働いてくれる特徴があります。
ミネラル
ミネラルは骨や歯の材料になったり、細胞や臓器の機能維持を行っています。また、成長を促す体内ホルモンのような作用があるため、体調管理には必要不可欠な栄養素です。とくに、筋トレ中の方はエネルギー消費量が高まるので、ミネラルの需要もアップします。
筋トレにおすすめ!野菜に含まれている栄養素とは?
たんぱく質と一緒に摂りたい栄養素
ビタミンB6、ビタミンC、亜鉛があります。
ビタミンB6は、たんぱく質を合成しているアミノ酸の代謝をサポートしています。
ビタミンCは、たんぱく質の1つであるコラーゲンの合成に関わっています。
亜鉛は動物性タンパク質の吸収を高めたり、インスリンの構成成分になります。
栄養素 |
含まれている食材 |
ビタミンB6 |
ししとう(生)、ブロッコリー(花序生)、切り干し大根(乾燥) |
ビタミンC |
赤ピーマン、黄色ピーマン、ブロッコリー(花序生)、豆苗(茎葉生) |
亜鉛 |
切り干し大根(生)、枝豆(生)、しその葉(生)、ごぼう(根生) |
参照:八訂食品成分表
炭水化物(糖質)と一緒に摂りたい栄養素
ビタミンB1、マグネシウムがあります。
ビタミンB1は糖質を体内で燃焼させてエネルギーに変えてくれます。
マグネシウムは糖質代謝に関わり、産生したエネルギーを効果的に活用します。
栄養素 |
含まれている食材 |
ビタミンB1 |
グリーンピース(生)、枝豆(生)、豆苗(茎葉生) |
マグネシウム |
切り干し大根(乾燥)、ほうれん草(葉生)、枝豆(生) |
脂質と一緒に摂りたい栄養素
ビタミンB2があります。
ビタミンB2は脂質の代謝に関わり、補酵素としての役目があります。
栄養素 |
含まれている食材 |
ビタミンB2 |
モロヘイヤ(葉茎生)、ブロッコリー(花序生) |
炭水化物、たんぱく質、脂質の全てに関わる栄養素
クロム、ナイアシン、 ビオチン、パントテン酸があります。
クロム、ナイアシンは三大栄養素の代謝のサポートに働きます。
ビオチンは、三大栄養素の補酵素として作用します。
パントテンは三大栄養素の代謝のサポートや補酵素を兼ね備えています。
栄養素 |
含まれている食材 |
クロム |
かんぴょう(乾燥)パセリ(葉生)、リーフレタス(葉生) |
ナイアシン |
切り干し大根(乾燥)、グリーンピース(生)、スイートコーン(未熟種子生) |
ビオチン |
ほうれん草(葉 通年平均茹で)、さやいんげん(若さや生)、トマト |
パントテン酸 |
カリフラワー(花序生)ブロッコリー(花序生)、しその葉(生) |
野菜にはこんな働きも!野菜の機能性とは?
野菜を摂るとどんな効果があるの?
体脂肪の蓄積を抑える
野菜に含まれている食物繊維は血糖値を緩やかにしてくれるので、インリンの大量分泌を抑えて体脂肪に蓄積されにくくしてくれます。そのため、野菜を食事の最初に食べること(ベジファースト)はダイエットにも効果的です。
抗酸化作用
緑黄色野菜に豊富なビタミンA、ビタミンC、ビタミンEには抗酸化作用があります。この抗酸化作用によって、トレーニングの際に筋修復で生じる活性酸素を防ぐことができますよ。
また、ビタミンAとビタミンEは脂溶性ビタミンと言われるので、油と一緒に炒めたり、肉や魚などの脂質が多い食品と一緒にとると吸収率が高まります。
栄養素 |
含まれている食材 |
ビタミンA |
人参(皮無し、油炒め)、ほうれん草(葉 冷凍茹で)、モロヘイヤ(茎葉生) |
ビタミンE |
かぼちゃ(西洋かぼちゃ焼き)、モロヘイヤ(茎葉生)、ドライトマト |
ビタミンC |
赤ピーマン、黄色ピーマン、ブロッコリー(花序生)、豆苗(茎葉生) |
免疫力を高める
野菜には食物繊維が多く含まれているので、腸内にも良い効果を与えます。
免疫細胞は腸内に70%が存在しているため、身体の免疫力を支えている中心器官と言えるのです。
食物繊維は善玉菌の餌になり、善玉菌を増やすように促してくれます。そして、善玉菌は免疫細胞の働きを高める働きがありますよ。
野菜は野菜ジュースで代替えしても良い?
野菜ジュースはビタミンやミネラルを手軽に摂取できるメリットがありますが、商品によっては糖質が高いものもあるので注意が必要になります。
ジュース類は野菜と異なり、噛むことをしないので吸収が良く、血糖値が上がりやすい性質があります。また、製造工程で食物繊維が少なくなっていることも。
野菜ジュースは野菜とは栄養成分が異なるので、野菜の代わりにはなりませんが、野菜がとれない時の救世主として考えると良いでしょう。
野菜ジュースを選ぶときは、果汁が入らないものや糖質オフタイプがおすすめです。
野菜の栄養素を発揮する!おすすめのメニューを紹介
鶏むね肉とブロッコリー・赤ピーマンの中華炒め
ブロッコリーや赤ピーマンはビタミンB6やビタミンCが多いので、鶏むね肉のたんぱく質と一緒に組み合わせると効果的です。
作り方は下茹でしたブロッコリーに鶏むね肉と赤ピーマンをごま油、鶏ガラスープの素、醤油で味つけし、最後に白いりごまをふったら完成です。
ほうれん草としその白和え
ほうれん草やしその葉には炭水化物、たんぱく質、脂質などの代謝に関わるビオチンが豊富に含まれています。ヘルシーな木綿豆腐と一緒に和えて代謝を促しましょう。
作り方は、木綿豆腐を水切りします。そして、ボウルに木綿豆腐と練りごま、すりごま、味噌、醤油、砂糖の調味料を加えてから、茹でたほうれん草を加えます。最後に千切りにしたしその葉をさっと和えたら完成です。
切り干し大根ハンバーグ
切り干し大根にはビタミンB6やナイアシン、マグネシウムなどが含まれており、炭水化物、たんぱく質、脂質の代謝を促してくれる栄養素が含まれています。
切り干し大根は煮物に使用することが多い傾向にありますが、ハンバーグなどの脂質が多いメニューと一緒に組み合わせることでカサ増し効果もあり、カロリーや脂質のダウンに繋がりますよ。また、切り干し大根を入れると歯ごたえがアップして満腹感も増しますのでおすすめです。
作り方は、切り干し大根を水で戻します。しっかり水切りして1cmくらいの長さにカットしてボウルに入れます。次に、卵や牛乳に浸したパン粉、豚ひき肉と一緒に和えて捏ねたらフライパンで焼きます。ハンバーグのタネに焼き色がついたら、トマト缶、コンソメ、ウスターソースを加えて煮込んだら完成です。
まとめ
野菜に含まれている栄養素は様々なので、食材を偏りなく摂れると代謝も高まり、筋トレにも良い効果を与えてくれます。野菜は生野菜以外にも、炒めたり、食材に混ぜ込んだりすると量もたくさん摂れますし、野菜が苦手な方でも食べやすくなりますね。